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国内最南端・五ヶ瀬ハイランドスキー場の営業廃止、地域観光の転機に
国内最南端のスキー場が担ってきた役割
五ヶ瀬ハイランドスキー場は、「国内最南端のスキー場」として知られ、冬季の雪資源が限られる九州において、地域の象徴的な観光拠点として機能してきました。標高の高い立地を生かし、九州内外から来訪者を集めることで、冬の観光需要を地域にもたらしてきた点が大きな特徴です。単なるレジャー施設ではなく、「雪が降る九州」という希少性そのものが観光資源となり、宿泊、飲食、交通、周辺観光へと波及する役割を果たしてきました。
とくに地方観光では、ひとつの中核施設が地域全体の集客導線をつくることが珍しくありません。五ヶ瀬ハイランドスキー場もその典型で、スキーを目的に訪れた人が、地元の温泉や食、自然景観へ立ち寄ることで、冬季の経済循環を支えてきたと考えられます。営業廃止は、こうした「点の観光」から「面の観光」へと地域が発想を切り替える契機になります。
営業廃止が示す観光構造の変化
スキー場の営業廃止は、地域にとって単純なマイナスではなく、観光の前提条件が変わったことを示します。気候変動や降雪不安定化、維持管理費の増大、利用者の広域分散など、地方スキー場を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。九州のように雪資源が限定的な地域では、安定した積雪を前提にした事業モデルを維持することが、以前より難しくなっています。
この変化は、地域観光の「冬季依存」を見直すきっかけにもなります。営業廃止によって来訪動機の中心が失われる一方で、地域は季節限定の集客から通年型の魅力づくりへ移行しやすくなります。たとえば、山岳景観、星空、トレッキング、キャンプ、食文化、農村体験など、雪以外の資源を組み合わせることで、訪問の理由を増やす発想が重要になります。スキー場が果たしていた「冬だけ人を呼ぶ装置」から、「一年を通じて人を滞在させる仕組み」へと再編することが、今後の焦点です。
地域経済への影響と再編の課題
五ヶ瀬ハイランドスキー場の営業廃止は、直接的には宿泊業、飲食業、土産物販売、交通事業者への影響が懸念されます。冬の一定期間に集中していた需要が減るため、短期的には売上の落ち込みが避けにくく、地域の雇用や事業継続にも波及する可能性があります。特に、スキー客を前提に営業していた事業者ほど、代替需要の確保が急務になります。
一方で、こうした転機は地域の観光戦略を再設計する機会でもあります。重要なのは、単に「スキーの代わり」を探すことではなく、地域の強みを季節ごとに分散させることです。春から秋にかけての自然体験や、地元食材を生かした滞在型観光、教育旅行やワーケーションなど、複数の需要を束ねることで、年間を通じた観光の安定化が見込めます。既存施設をどう活用し、既存の人材や交通導線をどう生かすかが、地域再編の成否を左右します。
「終わり」ではなく「転換点」としてどう生かすか
五ヶ瀬ハイランドスキー場の営業廃止は、地域観光の衰退を意味するだけではありません。むしろ、単一施設への依存から脱却し、地域全体を観光資源として再編集するための転機と捉えることができます。これまでスキー場が担っていた集客力を、そのまま他分野へ置き換えることはできませんが、自然、食、文化、人の暮らしを組み合わせれば、新しい魅力の形はつくれます。
今後の鍵は、外から人を呼ぶだけでなく、地域内の事業者や住民が一体となって「何を見せる地域なのか」を明確にすることです。五ヶ瀬のような山間地では、派手な大型開発よりも、地形や気候、生活文化そのものを価値に変える戦略が向いています。スキー場の営業廃止はひとつの時代の終わりですが、その先に、通年型観光へ向かう新しい地域像を描く余地があります。
