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高市内閣の政策転換が進める『つながらない権利』の重要性
高市内閣の政策転換が問う「つながらない権利」の本質
第2次高市内閣が推進する労働政策の転換点として、「つながらない権利」の重要性が浮上している。この権利は、労働時間外に仕事の連絡が私生活に及ばないことを保証するもので、過労社会の是正を象徴する施策だ。高市早苗首相の「働いて働いて働いて……」というモーレツ宣言が象徴するように、内閣は長時間労働の是認へ舵を切ろうとしているが、ここで「つながらない権利」が鍵を握る。
これまで日本は、働き方改革を通じて労働時間規制を強化してきた。2019年の改正労働基準法では、残業上限を月45時間・年360時間に設定し、過労死の根絶を目指した。しかし、コロナ禍後の残業時間は2024年時点で月120時間と、法施行前より低水準を維持しているとはいえ、現場では「残業代目当ての長時間労働」が常態化。企業側は生産性向上を名目に柔軟性を求め、労働者側は心身の疲弊に苦しむジレンマが続いていた。
そんな中、労働基準関係法制研究会の報告書が転機を生んだ。そこでは「2週間以上の連続勤務禁止」「勤務間インターバル(勤務と次の勤務の間に一定時間確保)」に加え、「つながらない権利」のガイドライン策定が提言された。これは、欧州諸国で既に法的に認められる「デジタルデタッチメント権」に相当する。フランスでは2017年から、労働契約で連絡拒否を明記可能となり、スペインやベルギーも追従。背景には、スマホやメールの常時接続がもたらす「常時オン」状態のストレスだ。日本でも、テレワーク普及で業務連絡が夜中や休日に飛び交い、メンタルヘルス被害が急増。厚生労働省の調査では、労働者の約4割が「休日連絡に悩む」と回答している。
高市内閣の政策転換は、この文脈で注目される。首相は就任直後、厚労相に「心身の健康維持と従業員の選択を前提とした労働時間規制の緩和」を指示。自民党政権公約でも「経済成長に資する柔軟で多様な働き方」を掲げ、運用・制度面からの検討を約束した。衆院解散後の第2次内閣では、40年ぶりの労働基準法改正が再燃。長時間労働の「是正」から「是認」へのシフトが懸念される中、「つながらない権利」は規制緩和の「安全弁」として位置づけられる可能性が高い。
なぜ重要か。一つはワークライフバランスの再定義。規制緩和で長時間労働を容認するなら、業務裁量権の拡大が不可欠だ。成果主義の職種では時間ではなくアウトプットを重視するが、時間給連動型の仕事では「長く働く=稼ぐ」構造が残る。「つながらない権利」は、労働時間外の「オフタイム」を法的に守ることで、過労回帰を防ぐ。欧州の事例では、導入後離職率が10%低下し、生産性が5%向上したデータもある。日本企業も、残業抑制でイノベーションを促進できるはずだ。
二つ目は経済成長との両立。高市首相の支持基盤は「モーレツ勤勉」を是とする層だが、公約の「経済成長に資する」文言が示す通り、単なる緩和ではない。テレワーク時代に適した「選択型労働」を目指す。例えば、裁量労働制の拡大とセットで「つながらない権利」を義務化すれば、企業は優秀人材を確保しやすくなる。2024年の有効求人倍率1.3倍の労働市場で、若手離脱を防ぐ切り札だ。
しかし、課題も山積。報告書の提言は労働者保護色が強いが、内閣の方向性は逆行気味。選挙戦で高市首相が睡眠を削ったように、政治家自身が「つながらない」を実践していない現実がある。企業側の抵抗も激しい。中小企業では「人手不足で連絡必須」との声が多く、ガイドライン化だけでは不十分。法改正で罰則を設け、企業文化を変える必要がある。
さらに、グローバル比較で日本は遅れを取る。ドイツの「オフライン権」は企業規模に関わらず適用され、幸福度ランキングで上位を維持。一方、日本は過労死線引きの曖昧さが問題化。内閣が「つながらない権利」を本格導入すれば、GDP押し上げ効果も期待できる。IMF推計では、労働時間短縮で日本経済は年1%成長余地がある。
第2次高市内閣の動向は、労働政策の分岐点だ。「つながらない権利」を規制緩和の「歯止め」に位置づけ、業務裁量とオフタイムのバランスを取れれば、新たな働き方改革が花開く。逆に、経済優先で骨抜きにすれば、過労社会の悪循環が続く。国民の選択が問われる時だ。首相の「働いて働いて」精神を、持続可能な形で昇華させるのが、内閣の責務と言えるだろう。
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